旋盤加工屋が解説!:隅R・角R指定と加工上のポイント

ステンレス等の難削材の旋盤加工をメイン事業とする当社は、形状・寸法の細かな指定がある加工品を数多く手掛けてきました。下記では隅Rの加工におけるポイントについて取り上げています。隅Rとは何かという基本情報から、加工会社の立場で見た最近の図面傾向・コストアップを招く図面の書き方など、加工を熟知したエンジニアからの視点で情報をお届けいたします。

隅R・角Rとは?

隅Rと角Rは、機械設計や製図において角形状を指定する上で重要な用語です。以下にそれぞれの違いを説明します。

隅R (Corner Radius)

隅Rは、 止まり角や内側の角部分に施される丸みを持つ半径を指します。具体的な使用例としては、部品の内側の隅や内部切欠き部分、凹部の角に適用されます。隅Rをあえて指定する理由としては、 部品の1点に対する応力集中を避け、破損や疲労のリスクを減らすことが目的とされています。また、部品の組み立てが容易になることや、製造プロセス上の利便性もあります。

角R (Edge Radius, Chamfer Radius)

角Rは、部品の外縁や外側の角部分に施す丸みを持つ半径を指します。具体的な使用例としては、 部品の外周角、凸部、外部エッジ部分に適用されます。角Rをあえて指定する理由としては、安全性向上のためにエッジを丸め、怪我を防止することが目的とされ、さらに部品の耐久性を高め、他の部品と接触する際に摩耗や損傷を防ぐためにも使用されます。

隅Rと角Rはともに部品の角部を丸くするための設計手法ですが、適用される箇所や目的に違いがあります。隅Rは内角部分に、角Rは外角部分に使用され、各々の役割に基づいて適切に選択され、使用されます。

加工会社の立場での、図面要求に対する考え方

当社で加工を行う図面の多くは、お客様が指定された図面です。加工依頼をいただいた場合、当社がお客様よりいただいた図面に対して、加工対応可否を確認させていただきます。その際、加工方法・工程はもちろん、部分的に加工が難しい・コストアップを招いてしまう箇所などを洗い出し、お客様とお打合せをさせていただきます。

その際、以下の点をお気を付けいただきたいと考えています。

1.隅Rの形状は必要ですか?安易な形状指定はコストアップを招きます。

図面指定上、よく見られるのがこの点です。本当に必要な形状であるのか、改めて検討いただきたいと考えています。というのも図面上での形状指定は、多くの設計者の皆様が相手部品との嚙み合せを考慮して設計されます。一方、加工会社としては、設計者様の意図するところを図面より読み取り、加工を検討させていただいております。

例えば、隅R0.2の図面要求がある場合においても、相手部品との嵌めあい公差の点で図面指定がなされ、強度上問題がなければR0.4チップで下記のように形状を加工することで公差緩和とともに、加工コスト削減が可能です。

過去、実績のある製品・お取引のある製品であれば、必要な形状等を加工会社も考慮し、VA・VE提案を行うことができますが、不要な提案を好まれないメーカー様も多いのが現状です。結果、加工会社は不要な形状・精度をそのまま実現する為、加工する側からすると、手をかけざる負えず、コストアップにつながります。

2.迷ったら加工会社に相談!QCDで最適な製品となるVA・VE提案を受けましょう。

当社では、図面をいただいた際、お客様の用途も考慮しながらこの2点に加工会社として配慮しながらVA・VE提案をさせていただきます。加工技術も日々変わり、以前は難しいとされた加工が技術の進歩によりできる場合もあります。

VA・VE提案を加工会社から引き出す上で、スムーズなやり取りの為にも図面のご依頼をいただく際には、製品用途も含めてお伝えいただけますと幸いです。

隅R・角R形状を指定した加工事例

ステンレス630旋盤加工品‐リテーナー‐

こちらは、ステンレス精密旋盤加工.COMで加工した、SUS630で使用しているガスシール部品です。
形状的に、当社が得意とする精密旋盤・薄肉旋盤加工品の一つと言えます。
外径の薄肉部、同軸、同芯の幾何公差が厳しい案件です。また外径の薄肉シール部は面粗度の要求が厳しい案件です。

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