旋盤加工屋が解説!:真円度要求に対するデータムの設定と加工におけるポイント

ステンレス等の難削材の旋盤加工をメイン事業とする当社は、幾何公差の要求が厳しい加工品を数多く手掛けてきました。下記では真円度について取り上げています。真円度とは何かという基本情報から、加工会社の立場で見た最近の図面傾向・コストアップを招く図面の書き方など、加工を熟知したエンジニアからの視点で情報をお届けいたします。

真円度とは?

真円度(しんえんど)とは、円形の対象物が理想的な円とどれだけ一致しているかを示す指標です。真円度は、製造や工学、品質管理などの分野で、部品や製品の円形の精度を評価するために使われます。真円度が高いほど、その対象物は理想的な円に近い形状を持っていることを意味します。

また、真円度の評価方法にはいくつか種類があり、主要な評価基準として以下の4つがあります。各々の評価方法には用途と利点があり、状況に応じて選定されます。

真円度の種類(測定理論の背景)解説
最小二乗真円度

(Least Squares Circle, LSC)

測定した点群データに対して最小二乗法を適用して最適な円を求め、その円からの偏差の平方和が最小になるように評価します。統計的な視点から理想的な円を求めることができます。。
最小包絡真円度

(Minimum Zone Circle, MZC)

対象物を包み込む最小の円とその内側の最大の円を用いて評価します。2つの円の中心が一致することが条件で、その間の最大最小のギャップが最小になるように評価します。厳密な評価方法とされており、真円度の評価において高い精度を求める場合に利用されます。
最大内接真円度

(Maximum Inscribed Circle, MIC)

対象物の内部に位置する最大の円を基本として評価します。対象の物内部にどれくらい大きな円が収まるかを示し、内接する最大の円が見つかるまでデータを分析します。
最小外接真円度

(Minimum Circumscribed Circle, MCC)

対象物を全体的に包み込む最小の円を基にして評価します。対象物を取り囲む最小の円が見つかるまでデータを分析し、その円の直径を基に真円度を算定します。

我々が測定を行う場合には、最小二乗真円度(LSC)と最小包絡真円度(MZC)が最も頻繁に用いられます。LSCは計算が比較的簡便であり、統計的な評価に適しているため、広く使用されます。一方、MZCは高精度な評価が求められる場合に適しており、理想的な円との最大偏差を最小化するための基準として利用されます。

加工会社の立場での、図面要求に対する考え方

当社で加工を行う図面の多くは、お客様が指定された図面です。加工依頼をいただいた場合、当社がお客様よりいただいた図面に対して、加工対応可否を確認させていただきます。その際、加工方法・工程はもちろん、部分的に加工が難しい・コストアップを招いてしまう箇所などを洗い出し、お客様とお打合せをさせていただきます。

その際、以下2点をお気を付けいただきたいと考えています。

1.真円度の指定漏れはありませんか?十分にご確認をください。

気を付けて頂きたい点の1つ目は、図面への幾何公差の付け方です。加工会社は、図面とともにお客様の用途を考慮し、製品の使用状況を加味した上で仕上げ方法を考えます。しかし、幾何公差が指定されていないと、理論上きちっと精度が出てるとは限らないのでお客様の要求される製品とは違う場合が出てきます。

つまり、製品の機能上、どうしても外すことができない精度指定は漏れなく、図面上で指定いただきたいと考えています。ただし、どの程度幾何公差を付けるべきか、判断に迷った場合には、その旨ご相談ください。加工会社の視点で過去実績をベースにご提案をさせていただきます。ご安心ください。

2.不要な幾何公差・安易な真円度指定はコストアップを招きます。

1つ目と矛盾するように見えますが、図面指定上、よく見られるのがこの2つ目です。幾何公差の付け方にも多種多様さがありますが、設計者様の意図するところを図面より読み取り、加工を検討させていただいております。不要な幾何公差・安易な真円度指定は、加工する側からすると、手をかけざる負えず、コストアップにつながります。

迷ったら加工会社に相談!QCDで最適な製品となるVA・VE提案を受けましょう。

当社では、図面をいただいた際、お客様の用途も考慮しながらこの2点に加工会社として配慮しながらVA・VE提案をさせていただきます。加工技術も日々変わり、以前は難しいとされた加工が技術の進歩によりできる場合もあります。

VA・VE提案を加工会社から引き出す上で、スムーズなやり取りの為にも図面のご依頼をいただく際には、製品用途も含めてお伝えいただけますと幸いです。最後に、当社が加工を行った真円度要求有の加工品事例をご紹介いたします。

真円度の要求があった具体的な製品事例

事例①:ステンレス(SUS304)旋盤加工品‐ハウジング形状部品ー

今回ご紹介するステンレス旋盤加工事例は、プラント業界向けステンレスSUS304製 ハウジング形状の加工品です。
製品サイズは、大きさ:φ200×110です。加工におけるポイントとしては、外周にボルトを逃がすためのDカットを施している点と、中に流れる流体用に外周からねじ止めをして、その上を溶接肉盛りしている点です。旋盤加工においては、データム基準の真円度ならびに同芯度の要求があり、肉厚がしっかりとある製品でもないため、手をかけて工程を踏まないと要求された精度を満足させることが難しい製品と言えます。

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事例②:ステンレス(SUS304)旋盤加工品‐ハウジング形状部品ー

こちらは、ステンレス精密旋盤加工.COMで加工をしたステンレス(SUS430)の窓抜きリングです。プラント業界向けの製品で、特徴としては、大きさがφ410×70 最小肉厚は約15mm。外周より16か所の窓抜きの加工がある点です。また、窓加工を施した後での、両サイドの内径の同心度、真円度要求があり、細かな幾何公差指定があるややこしい案件と言えます。

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