旋盤加工屋が解説!:同芯度/同軸度要求に対するデータムの設定と加工におけるポイント
ステンレス等の難削材の旋盤加工をメイン事業とする当社は、幾何公差の要求が厳しい加工品を数多く手掛けてきました。下記では同芯度/同軸度について取り上げています。同芯度/同軸度とは何か、各々の違いをはじめとする基本情報から、加工会社の立場で見た最近の図面傾向・コストアップを招く図面の書き方など、加工を熟知したエンジニアからの視点で情報をお届けいたします。
同芯度/同軸度とは?
同芯度(どうしんど・Concentricity)とは、複数の円の中心が同じ点に位置していることを示します。つまり、同一平面上に存在する異なる円形の形状(例えば、同じ部品にある異なる円の部分)が同じ中心を共有しているかどうかを評価します。この公差は、回転体の振れやバランスを評価する際に重要であり、当社が得意とする旋盤加工技術が求められる領域です。
また、少し混同されやすい幾何公差として、同軸度(Coaxiality)というものがありますが、同軸度はまず2物体の位置関係を指定するもので、2つ以上の円筒や円錐の軸が同じ直線上にあることを要求します。部品の軸が完全に一直線上に並んでいるかどうかを評価し、機械部品の回転精度や組み立ての正確性に重要な要素と言えます。
同芯度と、同軸度は、同じような幾何公差を指すように見えますが、簡単に言うと、同芯度は「円の中心」の一致を評価し、同軸度は「軸の直線性」の一致を評価するものであり、明確に測定項目が異なります。この点は図面を読み取る上でも、製図していただく上でも押さえていただきたいポイントです。
加工会社の立場での、図面要求に対する考え方
当社で加工を行う図面の多くは、お客様が指定された図面です。加工依頼をいただいた場合、当社がお客様よりいただいた図面に対して、加工対応可否を確認させていただきます。その際、加工方法・工程はもちろん、部分的に加工が難しい・コストアップを招いてしまう箇所などを洗い出し、お客様とお打合せをさせていただきます。
その際、以下2点をお気を付けいただきたいと考えています。
1.同芯度/同軸度の指定漏れはありませんか?十分にご確認をください。
気を付けて頂きたい点の1つ目は、図面への幾何公差の付け方です。加工会社は、図面とともにお客様の用途を考慮し、製品の使用状況を加味した上で仕上げ方法を考えます。しかし、幾何公差が指定されていないと、理論上きちっと精度が出てるとは限らないのでお客様の要求される製品とは違う場合が出てきます。
つまり、製品の機能上、どうしても外すことができない精度指定は漏れなく、図面上で指定いただきたいと考えています。ただし、どの程度幾何公差を付けるべきか、判断に迷った場合には、その旨ご相談ください。加工会社の視点で過去実績をベースにご提案をさせていただきます。ご安心ください。
2.不要な幾何公差・安易な同芯度/同軸度指定はコストアップを招きます。
1つ目と矛盾するように見えますが、図面指定上、よく見られるのがこの2つ目です。幾何公差の付け方にも多種多様さがありますが、設計者様の意図するところを図面より読み取り、加工を検討させていただいております。不要な幾何公差・安易な同芯度/同軸度指定は、加工する側からすると、手をかけざる負えず、コストアップにつながります。
迷ったら加工会社に相談!QCDで最適な製品となるVA・VE提案を受けましょう。
当社では、図面をいただいた際、お客様の用途も考慮しながらこの2点に加工会社として配慮しながらVA・VE提案をさせていただきます。加工技術も日々変わり、以前は難しいとされた加工が技術の進歩によりできる場合もあります。
VA・VE提案を加工会社から引き出す上で、スムーズなやり取りの為にも図面のご依頼をいただく際には、製品用途も含めてお伝えいただけますと幸いです。最後に、当社が加工を行った同芯度/同軸度要求有の加工品事例をご紹介いたします。
同芯度/同軸度の要求があった具体的な製品事例
事例:ステンレス316(SUS316)の旋盤加工品-グランドプレート-端面深堀溝
今回ご紹介する製品はステンレス精密旋盤加工.COMが手掛けた、プラント向けグランドプレートで端面深堀加工を行った製品です。
材質はステンレスSUS316で、大きさはφ160×70です。右側から深い部分に島残し上に突起があり、その外径側にOリング溝が加工されています。
上面のつばの外径部がデータムになり、データムに対しての同軸度の要求が、内径、奥のつばの外径、Oリング溝に対してあります。
事例:ステンレス316(SUS316)製旋盤加工品‐スリーブ-
こちらは、ステンレス精密旋盤加工.COMが加工した、SUS316を材質したガスシールとしての用途をもつスリーブ部品です。
同形状のサイズ、材質違いの製品も本Webサイトに掲載しています。こちらの事例の特長としてはSUS316の材質特性にあり、加工時において歪みが発生しやすく、工程や治具に工夫を施す必要がございます。