旋盤加工屋が解説!:振れ精度のデータムの設定と加工におけるポイント

ステンレス等の難削材の旋盤加工をメイン事業とする当社は、幾何公差の要求が厳しい加工品を数多く手掛けてきました。下記では振れ精度について取り上げています。振れ精度とは何かという基本情報から、加工会社の立場で見た最近の図面傾向・コストアップを招く図面の書き方など、加工を熟知したエンジニアからの視点で情報をお届けいたします。

振れ精度とは?

物体や機械部品が回転運動を行う際、理想的な回転軸からどれだけずれているかを示す指標です。一般的に、回転軸の安定性や一致度を測るために使用され、振れが小さいほど高い精度を示します。振れ精度の種類としては主に、下記4つがあるとされています。当社が製造する製品の多くは、軸方向・径方向の振れを指定・要求している製品が多く、この点をクリアする加工が求められます。

振れ精度の種類解説
軸方向振れ

(Axial Runout)

軸方向振れは、部品の回転面が軸中心に対してどれだけ垂直にずれているかを測定します。これにより、端面やフランジの平面度が評価されます。
径方向振れ

(Radial Runout)

径方向振れは、回転軸に対する部品の表面が理想的な円からどれだけずれているかを測定します。これはシャフトや回転部品の精度を評価する際に重要です。
全振れ

(Total Runout)

全振れは、軸方向振れと径方向振れを統合したもので、回転する部品の全体的な振れを評価します。これはより厳密な精度管理が求められる場合に用いられます。
面振れ

(Face Runout)

面振れは、部品の端面が回転軸に対して真っ直ぐであるかを測定します。特にフランジやディスクなどの平面度が重要な部品で使用されます。

次に、加工を行う立場からみた振れ精度指定・図面要求に対する考え方をお伝えいたします。

加工会社の立場での、図面要求に対する考え方

当社で加工を行う図面の多くは、お客様が指定された図面です。加工依頼をいただいた場合、当社がお客様よりいただいた図面に対して、加工対応可否を確認させていただきます。その際、加工方法・工程はもちろん、部分的に加工が難しい・コストアップを招いてしまう箇所などを洗い出し、お客様とお打合せをさせていただきます。

その際、以下2点をお気を付けいただきたいと考えています。

1.振れ精度の指定漏れはありませんか?十分にご確認をください。

気を付けて頂きたい点の1つ目は、図面への幾何公差の付け方です。加工会社は、図面とともにお客様の用途を考慮し、製品の使用状況を加味した上で仕上げ方法を考えます。しかし、幾何公差が指定されていないと、理論上きちっと精度が出てるとは限らないのでお客様の要求される製品とは違う場合が出てきます。

つまり、製品の機能上、どうしても外すことができない精度指定は漏れなく、図面上で指定いただきたいと考えています。ただし、どの程度幾何公差を付けるべきか、判断に迷った場合には、その旨ご相談ください。加工会社の視点で過去実績をベースにご提案をさせていただきます。ご安心ください。

2.不要な幾何公差・安易な振れ精度指定はコストアップを招きます。

1つ目と矛盾するように見えますが、図面指定上、よく見られるのがこの2つ目です。幾何公差の付け方にも多種多様さがありますが、設計者様の意図するところを図面より読み取り、加工を検討させていただいております。不要な機械公差・安易な振れ精度指定は、加工する側からすると、手をかけざる負えず、コストアップにつながります。

迷ったら加工会社に相談!QCDで最適な製品となるVA・VE提案を受けましょう。

当社では、図面をいただいた際、お客様の用途も考慮しながらこの2点に加工会社として配慮しながらVA・VE提案をさせていただきます。加工技術も日々変わり、以前は難しいとされた加工が技術の進歩によりできる場合もあります。

VA・VE提案を加工会社から引き出す上で、スムーズなやり取りの為にも図面のご依頼をいただく際には、製品用途も含めてお伝えいただけますと幸いです。